兵庫県内企業における緊急事態への対応に関する調査研究

主任研究者  兵庫産業保健推進センター所長  瀬尾   攝
共同研究者 兵庫産業保健推進センター相談員  矢野   武
兵庫産業保健推進センター相談員  波多野 彦一
兵庫産業保健推進センター相談員  内藤  信夫

1.はじめに

  本報告書「職場における緊急災害時のマネジメント」は当センターが過去に発表した同種の調査の事実上の第3報を為すものである。
第1報は「阪神・淡路大震災における産業保健実態報告書」として平成8年1月に。
第2報は「同タイトル」で平成9年3月に。
今回の調査は震災より8年、前回の報告書より5年を経た現在の兵庫県下の事業場における「リスクマネジメント」についての意識を調査しよう、としたものである。

2.調査結果概略

調査対象
兵庫県下の事業場   5,096社
回答事業場数     1,797社 (回答率 35.3%)

(1) 規模別

49人以下 355社,50~99人 625社,100~199人 440社,200~299人 149社,300~499人 124社,500~999人 68社,1,000人以上 36社

(2) 業種別

製造業(753社),建設業(98社),運輸・交通業(121社),商業(130社),金融・保険業(43社),その他サービス業(423社),上記以外(229社)

(3) 有害作業の有無

有害作業あり1,015社(56.5%)。業務は深夜業,有機溶剤業務,粉塵作業の順に多い。

(4) 産業保健スタッフ選任

全回答中産業医を選任している所は1,240社,衛生管理者のいる所は1,253社,保健師,看護師のいる所は306社,とまあまあに見えるが裏から見ると有害作業有事業場で産業保健スタッフを選任していない事業場が86社(約9%)あるという事実の方が重大かもしれない。

(5)  リスクマネジメントの取り組みについては「これを認識し何等かのアクションを起こしている」という回答を寄せたのは715社(40%),「リスクマネジメントとは称さぬがそれに類する取り組みをしている」が460社(22%),即ち回答を寄せられた事業場の62%近くが,「リスクマネジメント」に関心を持って居られる。また有害作業のある事業場は,ない事業場の3倍近い数字の関心を示している。

(6)  「ハザード」のチェックに関しては1,062社が行っている。

(7)  緊急時対応マニュアルについては「ある」と答えた事業場が657社(36.5%)で,やはり有害作業のある製造業が多い。「マニュアル作成部署」については全くいろんな部課が対応しておりなんとも云えない。

(8)  これに関連した「マニュアル作成手続き」では「安全衛生委員会で検討した」が506社(28%)で比較的多く,「産業医の意見を聴取した」は75社(4%)であった。

(9)  「平常時」と「緊急時」のマニュアルの区別であるが「一見して分かるようになっている」の回答は227社(13%)であった。

(10) 「緊急時マニュアル」の従業員に対する周知については「マニュアルを配布」が403社(22%)「各作業場に掲示」が412社(23%)であった。

(11) 「有害物質の有害性・危険性の従業員に対する周知」では76%の事業場で何等かの形で周知・教育を行っている。
しかし,特に周知は行っていない,という回答も5%程度あった。

(12) 「緊急時対策本部の設置」は,約半々の割合で本社と出先に分かれている。

(13) 「緊急時指揮命令系統」は,回答が多岐に分かれたが,前問と同じように本社がトップに立つ場合と出先の判断に依る,とするものが略同数であった。

(14) 「緊急事態等の演習・訓練の実施」は1,035社(58%)が何らかの形で実施している。「していない」は392社(22%)あった。

(15) 「演習,訓練時の医療資格者の担当」では医療資格者は参加しない,が567社(36%)。救護・搬送の訓練のみ行う,が181社(10%)。避難のみ,その他,が193社(11%)であった。

(16) 「緊急時の外部機関に対する連携」については
① 「警察,消防機関」 969社 (54%)
② 「関係主要取引先」 293社 (16%)
③ 「~以外の公的機関」 271社 (15%)
④ 「契約医療機関」 249社 (14%)
等であった。
他に「親会社に連絡」という回答も見られた。

(17) 「緊急時最優先の対応事項」については
① 「作業者の安全」 1,159社 (64%)
② 「設備確保」 684社 (38%)
③ 「近隣被害の防止」 726社 (40%)
であった。
他に「兎にも角にも人命」の回答が多かった。
この問いには各社夫々の考え方が出ていて興味深かった。

(18) 「マニュアル未作成の事業場について」であるが,
① 「ある」 657社 (37%) についてはこれまでに述べた。
② 「検討中」 498社 (28%)
③ 「現在作成中」 75社 (4%)

3.まとめ

当センターは既に「阪神・淡路大震災における産業保健実態調査報告書」を2回に渡って発表している(平成8年,平成9年)。
今回の調査はその第3報になる訳であるが,特に「緊急災害時における対応策」を「リスクマネジメントシステム」の存在,という面より考察した。
結果は回答1,797社のうち(送付数5,096社)1,175社(65.4%)がこのことを意識している。(下記別表(A)参照)
しかし,これをマニュアルとして文書化しているのは657社(36.5%)であり,「現在作成中」「検討中」を含めても1,230社である。
「作成していない」「無回答」が1,081社(60%)を占めた。(下記別表(B)参照)
緊急災害を第一としても,その他企業に対して多くのリスクが存在する今日「リスクマネジメントシステム」の構築が各事業場にとってなによりも急務ではなかろうか。

(A)業種別「リスクマネジメント」取り組み状況

① 「リスクマネジメント」について知らないし,取り組みはない
② 「リスクマネジメント」ということは知らないが,それに類した取り組み(予定を含む)はある
③ 「リスクマネジメント」を認識し,それに対し何らかの取り組みをしている
④無回答

 

製造業 建設業 運輸・
交通業
商業 金融・
保険業
その他
サービス
左記以外 全業種
216 17 42 57 12 136 61 541
223 34 29 19 94 53 460
293 45 43 52 18 158 106 715
28 24 75

 

(B)業種別緊急時の対応マニュアル作成状況

① 緊急時の対応マニュアルが作成されている
② マニュアルは作成していない
③ 無回答

 

製造業 建設業 運輸・
交通業
商業 金融・
保険業
その他
サービス
左記以外 全業種
287 33 37 35 22 162 81 657
245 34 43 50 136 73 587
174 17 40 38 155 61 494

 

 

※ 兵庫産業保健推進センターでは、上記の「平成13年度産業保健調査研究報告書 兵庫県内企業における緊急事態への対応に関する調査研究(抄録)」を無料で配布しております。ご希望の方は当センターまでご連絡下さい。