両立支援コーディネーター基礎研修【平成31年1月30日開催】質疑応答

《社会資源に関する知識》

Q:メンタル疾患により業務遂行能力が低下している職員への配慮や雇用継続の観点から、障害者認定を本人に提案しようかと思いましたが、社内の者から障害者認定を勧めてはならないということを聞きました。
そのような話をすることは特段の配慮が必要かと思いますが、雇用継続の観点や退職後の生活安定の観点から提案をしたいと思ったときは、どうしたら良いのでしょうか。

A: ご質問のとおり、精神障害者保健福祉手帳や障害年金の手続きが可能であれば、福祉サービスの利用や経済的な支援などを受けられますが、手続きに際しては、まずは主治医への確認が必要かと思います。どちらの手続きも主治医による診断書の作成が必要となりますので、適用となるのかも含めて相談されてはと思います。
そのうえで主治医の先生から手続きの話をしていただくのはいかがでしょうか?人によっては、障害者とレッテルをはられるのは嫌だと思われる方もいらっしゃいますので、慎重な対応が必要だと思います。
また、手帳の一番等級が低い3級で、生活上で援助が必要という文言がございます、年金の一番等級が低い3級で、労働の制限を受けるという文言がございますので、そういう状況であれば、通常の職務を遂行するのは困難という評価でもあるかと思われます。

《両立支援のためのコミュニケーション技術》

Q: 配付(説明)資料の中で、「押してしまうとOffになる」 例)において「みんな最初はそう思うんですよ。でもやってみると楽になるから、私を信じてください」・・・・・「大丈夫、大丈夫。そんなの時代遅れですよ」と記載されていますが、
「大丈夫、大丈夫。そんなの時代遅れですよ。」について、このように書いてある理由をお聞きしたい。また、「そんなの時代遅れですよ」が悪い事例となるのでしょうか。

A: 今回の研修では、コミュニケーションのブラッシュアップの参考として、クライエントを中心とした傾聴による受容と共感の過程でどのような質問と応答を行うかについてお話しました。ある程度の自由度を保たせた回答から始めて、次第に不安や悩みなどの内容について尋ねていき、具体的なアイデア(答え)を導き出す質問をする方法です。
ご質問の例は、クライエントとの関係性が保てなくなる“関係のOff”の一つの極端な例としてあげています。この例では、クライエントも薬を飲まなくてはいけないことが分かっているけれども、本当は別に言いたいことがあるのかもしれません。このように、もし、断定的な応答をすると、その後、クライエントの気持ちや思いを話せず、次につなげられなくなることもありますので、良くない例としてあげています。

《労務管理に関する知識》

Q: 有休について使用者は時季変更権があるということでしたので、不調による急な休みが再々繰り返され他の職員から不満が出るような場合は注意することは構わないことと解釈しました。ただ注意しても効果がない場合の次のステップとして、主治医への情報提供依頼を行うようにしていますが、それでも改善が見られない場合の対応として、どのような対応が効果的でしょうか。

A: 年次有給休暇の時季変更権は、労働基準法第39条第5項に「・・・(略)請求された時季に有休休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」と規定されています。
「正常な運営を妨げる」の判断要素は、事業所の規模、業務内容、当該労働者の担当する職務内容、性質、職務の繁閑、代替要員確保の配置の難易、同時季に有休休暇を指定した員数、これまでの労働慣行などがありますが、実務上には自主的に時季を調整することが必要になります。
年次有給休暇を取得することを制限できるということではないことをご理解下さい。

Q: 病気休暇の制度は事業者が自主的に設ける法定外のものということでしたが、その目的は事業者によって違うものなのでしょうか。
事業所では、復職のための病気休暇と言われており、退職と自己決定した後に休むことを良いように捉えていないようでした。
その目的が就業規則に明記されていれば該当者に伝えて構わないでしょうか。明記されてない場合は伝えない方がよいのでしょうか。

A: 病気休暇については、ご質問のとおり任意で定めますので、事業所により目的は違うことになります。
目的の解釈も様々であるかと思いますので、就業規則に記載されている内容で伝えることが好ましいと思われます。
記載されていない場合で、事業所内での統一的な解釈を確認できない状況で伝えるには、事後のトラブルを招くことのないように注意が必要です。

《産業保健に関する知識》

Q:「事業者」「使用者」「雇用者」の違いがよくわかりません。
同じような意味に使われていますがどう使いわければいいのでしょうか。

A: 配付資料(講義スライド7)7の「事業者」「使用者」「雇用者」は、雇う側を示しています。
「事業者」は労働安全衛生法、「使用者」は労働基準法で使われていますが、「雇用者」は「被雇用者」に対応するものです。
ご質問のとおり、雇われる側を表現する場合にも使われ、労働者と同義にも使われるようです。
「日々雇用者」を短時間・季節労働者のことを示すことが多くあるようです。

Q:ストレスチェックは特殊ですと説明がありましたが詳しく知りたいのでお願いします。

A: ストレスチェックの特殊な面は、労働安全衛生法上に「事業者」「労働者」の他に「実施者」として資格を限定してストレスチェックを行う者を位置づけています。
実施者は、ストレスチェックの結果を労働者に通知しなければなりませんが、労働者の同意を得ずに事業者に結果を提供してはならないと労働安全衛生法第66条の10第2項に定められており、直接事業者から労働者に結果を通知する一般健康診断との違いがあるということです。