労災疾病等医学研究普及サイト「アスベスト」研究について

労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について時宜に応じた研修に取り組んでおります。

今回は、「アスベスト」です。

近年、アスベスト(石綿)関連疾患の労災請求件数は年間1,000~1,300件前後となっておりますが、その中には他の疾患との鑑別が困難なものや診断方法が特殊なものがあり、申請から処分決定までに時間を要する場合も少なくありません。こうした診断方法が難しいアスベスト関連疾患について、明確かつ簡易な診断方法・指標を確立し、より適切な治療・予防に役立てることを目的として、当機構では長年アスベスト関連疾患の診断等についての研究を行っています。

平成29年度までの研修では、診断時には既に進行していることが多く、他のアスベスト関連疾患との鑑別も困難な胸膜中皮腫について、新たな診断基準の確立を目指しました。胸膜中皮腫症例を全国から集め胸水に関するデータを抽出した結果、胸水中のヒアルロン酸の値などが、胸膜中皮腫の診断材料として実用性が高いことを明らかにしました。

平成29年度までのアスベスト研究については、こちらからご覧いただけます。

平成30年度からは、明確な労災認定基準がない両性石綿胸水について、新たな認定基準を確立することを目的とした研究を開始しました。新しい診断マーカーとして胸水中の物質(SLPI)に着目し、初期の胸膜中皮腫等と比較し良性石綿胸水はSLPIが有意に低いという結果が得られ、これにより将来迅速な治療及び労災請求の処理期間短縮につながることが期待されます。この成果は『Journal of  Occupational Health,2021年1月号(Volume 62, Issue 1)』に掲載されました。

平成30年度からのアスベスト研究の詳細については、こちらからご覧ください。

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